高低差のある土地とは、平坦ではなく傾斜がある土地で、一般的に、山の斜面や丘陵地、造成されたひな壇状の土地などが該当します。
このような高低差のある土地に家を建てる際には、土地特有のメリットやデメリットを理解したうえで適切な工法を選ぶことが重要です。
本記事では、高低差のある土地を活かして家を建てる方法や注意点について詳しく解説していきます。
Contents
高低差のある土地を購入する際の注意点
高低差のある土地を購入する前に、以下の点を確認することが重要です。
- 造成費用の有無
- 土砂災害リスクの確認
- 地盤の強度と補強の必要性
- 法規制の確認
それぞれについて、なぜ詳しく確認することが必要なのか詳しく解説していきましょう。
造成費用の有無
現実的に、高低差のある土地は平坦にするための造成工事を行ってから家を建てます。高低差のある土地が平坦な土地と比較して安価に設定されているのはそのためで、「高低差のある安い土地」をそのまま使用することは難しいです。
土地の傾斜を平坦にするための造成工事が必要な場合、追加のコストがかかる傾向にありますが、高低差の程度によって費用が異なります。
擁壁の設置や盛土・切土の工事費用を事前に見積もりをして造成費用について把握しておきましょう。調べることなく購入した場合、「想定外」の追加費用が必要になります。
土砂災害リスクの確認
ハザードマップを活用し、その土地が土砂崩れや地滑りのリスクがある地域かどうかを確認しましょう。特に急斜面の土地は、地盤の強度が重要です。
現実的に、高低差がある土地は平坦な土地と比較して何らかのリスクが潜んでいます。災害リスクが高い場合、災害発生時に大きな被害を被る可能性もあるため、例え安価に取得できる場合ではあっても、控えた方が良いケースもあります。
地盤の強度と補強の必要性
高低差のある土地は地盤が弱いケースがあります。地盤が弱い場合、地盤改良や杭打ち工事が必要になることがあるため、やはりこちらも追加での出費を強いられることになります。そのため事前に地盤調査を行い、安全に建築できるか確認しましょう。
地盤の弱さは災害時のリスクを高めます。補強に関しても地盤次第で費用が変わるため、あまりにも地盤が弱い高低差のある土地は大きな出費を強いられる可能性もありますし、例え大きな出費を割いて強度を高めても、自然災害発生時に家屋に甚大な被害を受けることも有り得ます。
法規制の確認
高低差のある土地では、宅地造成等規制法や建築基準法により、擁壁の設置や高さ制限が定められていることがあります。
土地取得後、自分自身がイメージしている家屋の建設が可能なのか、事前に確認することが大切です。
法律は遵守が求められます。場合によっては建築計画に大きな影響を与えるため、必ず土地取得前に自治体の規制を確認しましょう。
高低差を活かした家の工法
高低差のある土地に家を建てる場合、高低差を活かすことが求められます。
そこで、高低差を生かした工法をいくつか紹介します。
擁壁を設置しての平坦化
石積みやコンクリート、ブロック等にて擁壁を設置することで、高低差のある土地を平坦化します。この場合、感覚としては「平坦な土地に家を建てる」ことになります。
地盤の安定性も高まりますし、高低差がなくなることで施工の自由度も高まりますが、高さ制限や構造強度を確認する必要があります。
スキップフロアの活用
床の高さを変えるスキップフロアを活用することもできます。
床の高さを生かした解放感や立体的な空間デザインなど、個性的なデザインの家を求めている人にマッチしています。
一方で、段差が多くなるためバリアフリーに向いていない点と建築コストが高くなる点がデメリットです。
片流れの屋根や半地下の採用
高低差を生かし、片流れの屋根や半地下を採用することもできます。
例えば半地下であれば駐車場や収納・ワークスペースなどに活用しやすいです。傾斜を踏まえた効率的な土地活用が実現しますが、一方では地下部分の湿気対策や適切な採光・換気の計画が重要です。
採光・換気が悪いと住みにくい家となってしまいます。
高低差のある土地に家を建てるメリット
高低差のある土地に家を建てるメリットとして、主に以下の3点が挙げられます。
- 眺望が良い
- プライバシーを確保しやすい
- 独自性のあるデザインが可能
それぞれ詳しく解説していきましょう。
眺望が良い
高低差がある土地は、周囲と比較して高くなる傾向にあります。そのため、眺望が良いです。眺望の良さは周囲の環境に依存する部分ではありますが、平坦な土地に建設した家より、遠くを見晴らせる傾向にあります。
眺望は毎日視界に入るものなので、眺望の良さは日々の生活に充足感をもたらすことになるため、大きなメリットとなるでしょう。
プライバシーを確保しやすい
高低差のある土地に家を建てると、隣接する道路よりも高い場所に家を建てることになるため、通行人の視線が家の居住空間とずれます。平坦な場所に家を建てると、例えばリビングと通行人の視線の高さが同じなので、プライバシー対策を行わなければ、家の中が周囲から丸見えとなってしまいます。
その点、高低差のある土地であれば視線が同じではないので、プライバシーを確保しやすいです。
独自性のあるデザインが可能
高低差のある土地に家を建てる場合、その高低差を活かして家を建てることになるため、平坦な土地に建てる家と比較すると、独自性・オリジナリティを発揮しやすいです。
例え全く同じニュアンスではあっても、高低差があるだけで個性的な家となるため、「他と同じ家は嫌だ」「個性的な家を建てたい」と考えている人にとっては高低差のある土地はメリットです。
高低差のある土地に家を建てるデメリット
高低差のある土地に家を建てる場合、メリットだけではなくデメリットも把握しておく必要があります。
特に挙げられるデメリットとして、以下の3つがあります。
- 造成や基礎工事の費用が高くなる
- バリアフリー対応が難しい
- 土砂崩れや水はけの問題
それぞれについて、詳しく解説していきましょう。
造成や基礎工事の費用が高くなる
平坦な土地ではあっても家を建てる際に造成や基礎工事が必要ではありますが、高低差のある土地に家を建てる場合の造成や基礎工事は、平坦な土地に建てる際よりも高額になる傾向にあります。
土地を安価に取得できたとしても、高額となる造成・基礎工事費用を加算すると、平坦な土地よりも高額になる可能性もあります。
バリアフリー対応が難しい
高低差がある土地に家を建てる場合、平坦な場所に建てる家と比較して階段を多く採用することになります。結果「段差の多い家」となります。
デザイン性を追求して段差が多いのではなく「高低差のある土地での生活」のためのものなので、簡略化・省略が難しいです。
結果、バリアフリーへの対応が難しいです。
将来的にはバリアフリー環境をと考えている場合、高低差のある土地はどうしてもデメリットです。
土砂崩れや水はけの問題
高低差のある土地は平坦な場所と比較すると、自然災害時のリスクが高いです。実際に家を建てる場合、この点とどのように向き合うのかが重要です。
土砂崩れが起きた場合にどうするのかや、家の水はけの問題など、平坦な場所に建てる際にはさほど考慮する必要ない問題にも向き合う必要があります。
これらの問題への意識は、災害発生時に大きな差となる部分です。
高低差のある土地に建築する際のポイント
高低差のある土地に家を建てるにあたってはメリット・デメリットもありますが、実際に建築するにあたっては以下のポイントが大切です。
- 防災対策を考慮した設計にする
- 将来的なメンテナンスを意識する
- 高低差のある土地に家を建てた実績のある専門家に相談する
それぞれについて、詳しく解説していきましょう。
防災対策を考慮した設計にする
お伝えしたように、高低差のある土地は平坦な場所に建てる家よりも災害時のリスクが高いです。
そのため、防災対策の考慮は必須です。
さまざまな災害をシミュレーションしての設計が不可欠です。
将来的なメンテナンスを意識する
どこに建てる家であれ、将来的にメンテナンスが必要になりますが、高低差のある土地に家を建てる場合、階段が多くなります。結果、メンテナンスが難しくなりがちです。
しかしメンテナンスは不可欠です。そのため、将来的なメンテナンスを意識した家づくりが大切です。
高低差のある土地に家を建てた実績のある専門家に相談する
高低差のある土地に家を建てた実績の豊富な専門家・業者に相談しましょう。
自分だけでは考えが及ばない点を指摘してくれることも多いです。改めて知れレうことも多々あるでしょう。
一方、実績の乏しい業者に相談してもありきたりな返事ばかりで参考にならないケースが多いです。
公式ホームページ等でこれまでの実績を確認し、高低差のある土地に家を建てた実績の豊富な専門家や業者に依頼しましょう。
まとめ
高低差のある土地に家を建てる場合のポイントを解説しました。
平坦な場所に建てるよりデメリットとなる面もありますが、その点を個性としてとらえることで、平坦な場所の家では得られないメリットが手に入るのも事実です。
高低差のある土地を検討する場合、メリット・デメリットどちらか一方だけで考えるのではなく、それぞれを総合的に加味し、自分自身が思い描く理想の家を建てることができるのかを判断しましょう。